◆◆◆(AIなんか恐くない)「シリーズ・2045年シンギュラリティーへの旅」Vol.-7◆◆◆
◆◆◆「参考資料(ベーシック・インカムについて)」その2◆◆◆
(ミヌーシュ・シャフィーク)
(前略)
先進国の様に、社会保証制度が整い、必要とする人に支援が出来る国では、ベーシック・インカムは、かなりコストの高い提案だと思います。
最近IMFが出した試算では、先進国で平均所得の25%にあたるベーシック・インカムを払うとすると、GDPの6.5%もの非常に大きな金額になりました。これ程の額を予算に上乗せ出来る余裕のある国は、あまり思い付きませんね。
だからと言って、今の社会保証費から出すとなったら、これを適切な予算配分だと説得しても、理解は得られないと思います。
もちろん、今の社会保証制度には、大きな問題があって、経済の現状に適したものに変えなければいけませんが、先進国にはベーシック・インカムよりも、良い解決法があるはずです。
(司会者)
佐藤さんはベーシック・インカムに、あまり賛成ではない様ですね。
(佐藤康博)
はい。私は少し懐疑的です。1つは財政面への影響です。これは非常に重要な論点だと思います。
全ての人に同じ金額を分配し、更に財源のバランスも保つ為には、富裕層にもっと負担を課さないとならないでしょう。そうでなければ、他の財源が必要になってしまいます。
しかし、ベーシックインカムを導入する為に、富裕層の税金を増やすと言う事は、政治的に非常に困難だろうと思います。
また、一般の人達にとっては、富裕層も自分達と同じ額のお金を貰えると言うのは、心理的に賛成できないのではないでしょうか。富裕層への課税を強化できたとしても、理解を得られないのが現実だと思います。
(後略)
(司会者)
佐藤さんは財政面の懸念を指摘していました。シャフィークさんも、コストが高過ぎると言っていましたね。一体どうやって財源を確保するのか、疑問に思っている人も多いと思います。
スタンディングさんは、どう答えますか?。
(ガイ・スタンディング)
(前略)
私は、財源を確保する為に、障害者の為の給付金や、国民保険の予算を使う必要は、ないと考えています。
例えばイギリスでは、国が企業や富裕層に何10億ポンドもの補助金を与え、減税額も4000億ポンドを越えています。社会保証の予算を削らなくても、簡単に財源は確保できます。
多くの国が同じ様に、補助金として何10億もの円・ポンド・ユーロ・ドルを支払っていると思います。こうした政策は経済的な歪みを生み、豊かな人の負担を軽くし、たいてい格差を拡げます。
イギリスでは、1100種類もの減税制度があって、4000億ポンド以上もの歳入が見逃されているのです。最低限の生活を送るのに必要な収入を提供するだけなら、そのたった1部で十分足ります。
(ガイ・スタンディング)
(前略)
コストについて議論するなら、ベーシック・インカムによってもたらされる、経済的そして社会的利益も考えなければなりません。
例えばある地域で、全ての人にベーシック・インカムを提供すると、何と健康状態が向上し、医療費削減に繋がりました。学校の成績も上がります。
アメリカのある州での実験では、16才までベーシック・インカムを貰っていた子供は、そうでない子供に比べ、1学年分勉強も進んでいました。
犯罪の増加は、大きな社会的コストですが、収入が保証されれば犯罪率も下がります。
(司会者)
先ほどシャフィークさんは、ベーシックインカムはコストが高過ぎると言っていましたが、一方で今の制度にも欠点があると指摘していましたね。では、改善するには、どうしたらいいですか?。
(ミヌーシュ・シャフィーク)
ベーシック・インカム以外にも、より効果的で、効率の良い、多くの選択肢があると思います。
例えば賃金の補助は、とても魅力的な選択肢です。“負の所得税”と呼ぶ人もいますが、低賃金労働者の収入を国が補助して、ある程度の生活レベ ルを保てる様にするものです。
あるいは、最低賃金を引き上げたり、税制を替えて、労働者よりも資本家に、もっと税金を掛ける事も出来ます。
また、労働組合の交渉力を上げると言う選択肢もあります。低賃金労働者に重点を置いた政策は沢山あります。
(司会者)
バターフィールドさんは経営者ですから、プロジェクトに対して、どの様に資金調達するかを考えると思いますが、ベーシック・インカムは、どうやったら財政面でも上手く回って行くと思いますか?。
(スチュワート・バターフィールド)
GDPの6.5%と言うのは相当な額ですが、この11年で増えたアメリカの医療費に比べたら少ないと思います。
そんな事よりも私は、ベーシック・インカムは、潜在的な生産能力を引き出すと考えています。例えばアメリカでは、1/4もの人達が、貧しさから起業のチャンスすら掴めません。
幸運な事に、私は安定した中流家庭で育ったので、いろいろ仕事を試し、向いていない事を知ったり、失敗も出来ました。お金を借りたり、いちど休んで、色々と考える事も出来ました。しかし、ほとんどの人はそれが出来ません。一歩まちがえれば、ホームレスになりかねないからです。
より多くの人が起業に挑戦できれば、大きな変化が起きるでしょう。私は、資本主義を信じていますし、誰でも富を生み出せると信じています。人口の1/4から半分の人達が、そうした機会に恵まれていないのは、社会にとって成長の可能性を、大きく妨げています。
GDPの6.5%と言う数字は、10年後には、安かったと感じるかも知れませんよ。
(ナレーション)
ベーシック・インカムによって、潜在的な生産能力が引き出され、もっと多くの人が富を生み出せる様になる。と言う意見です。
(次回に続く)